東京高等裁判所 平成元年(行コ)122号 判決 1990年11月29日
東京都豊島区目白二丁目二〇番五号
控訴人
濱中利博
右訴訟代理人弁護士
松永渉
同
大徳誠一
同
伯母治之
東京都豊島区西池袋三丁目三三番二二号
被控訴人
豊島税務署長 槇総一郎
右指定代理人
沼田寛
同
杦田喜逸
同
小川健
同
和田千尋
右当事者間の所得税更正処分等取消請求控訴事件につき、当裁判所は、次のとおり判決する。
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実
一 控訴代理人は、「原判決を取り消す。被控訴人が昭和五七年一〇月三〇日付けで控訴人の昭和五五年分の所得税についてした更正及び過少申告加算税賦課決定処分を取り消す。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は控訴棄却の判決を決めた。
二 当事者双方の主張及び証拠関係は、当審における証拠関係について同目録記載のとおりであるからこれを引用するほか、原判決事実摘示のとおりであるからこれを引用する。
理由
一 当裁判所も、控訴人の本訴請求は、失当として棄却すべきものと判断するが、その理由については左に付加、訂正、削除するほか、原判決がその理由において説示するところと同一であるから、これを引用する。
1 原判決一八丁表二行目及び同裏二行目の各「尋問」の次に各「(原審)」を各加入し、同一九丁裏四行目の「三〇〇」を「三〇〇〇」と訂正し、同二一丁裏一行目の「一〇〇〇万円が」の次に「いずれも当座預金口座を通じて」を、同一〇行目の「六〇」の次に「(金額三〇〇〇万円)」を、同末行目の「八一」の次に「(金額各一〇〇〇万円計一億五〇〇〇万円)」を各加入する。
2 同二二丁表四行目の「は、」を「のうち三〇〇〇万円は」と、同五行目の「一九日に」を「一二日に、残額一億五〇〇〇万円は同月一九日に、それぞれ」と、同丁裏四行目の「ある」を「、別表二の<1>の土地の譲渡代金により設定された定期預金とは無関係である。」と各訂正する。
3 同二四丁裏二行目の「なお、」の次に「原審での本人尋問において」を、同二五丁表一〇行目の「ついては、」の次に「本件資産の譲渡代金以外の他の資金をもって保証債務が履行されたものというべきであるから、」を各加入し、同丁裏五行目の「するに、」を「する。同項に規定する『保証債務を履行するため資産の譲渡があった場合』とは、一般的には、保証債務を履行するために資産を譲渡し、社会通念上相当な期間内にその譲渡代金で保証債務を履行した場合または保証債務を代物弁済した場合における資産の譲渡をいうものと解される。保証債務の履行を他からの借入金によって行い、その後その借入金を返済するために資産を譲渡したような場合には、右資産の譲渡は原則としてこれに該当しないが、資産の譲渡に長期間を要するような場合において、やむをえず借入金でその保証債務を履行した後、社会通念上相当な期間内に資産を譲渡して借入金を返済するような場合等、実質的にみて保証債務の履行のための資産の譲渡と認められるものについては、例外的に同項の規定が適用されるものと解される(所得税基本通達六四―五参照)。これを本件についてみるに、前認定の事実によれば、」と訂正する。
4 同二六丁表二行目の「敢えて」の次に「別の定期預金を担保に一を加入し、同四行目の「利息」から同六行目の「あるから」までを「定期預金の設定、運用に伴う有形無形の経済的効果を享受したものということができる。したがって、控訴人は、本件資産の譲渡代金を一旦一年間にわたり運用した後、その一部である右一〇〇〇万円をもって保証債務の履行の用に供した借入金の一部返済に充てたにすぎないものであるから、前述のいずれの場合にも該当せず」と訂正し、同一〇行目から同丁裏八行目までを削除する。
二 以上の次第で、控訴人の本訴請求は失当として棄却すべきであり、これと同旨の原判決は相当であって、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、控訴費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 時岡泰 裁判官 沢田三知夫 裁判官 板垣千里)